女性と男性の着物には「格(かく)」があり、TPOに応じて選びます。礼装は最も格式が高く、結婚式などに着用。略礼装や外出着は用途に応じて使い分け、帯や小物も格に合わせるのが基本です。
女性の着物の格
女性の着物には、格式や用途によってさまざまな種類があり、それぞれに「格(かく)」があります。これはTPOに応じた着こなしの基本となる考え方です。
もっとも格式が高いのは「礼装」と呼ばれる着物で、結婚式や公式行事など改まった場にふさわしい装いです。たとえば、既婚女性が着る黒留袖(くろとめそで)は第一礼装とされ、新郎新婦の母親や親族が着用します。一方、未婚女性の第一礼装は本振袖(ほんふりそで)で、成人式や披露宴などに着用されます。
その次に位置するのが「略礼装(準礼装)」です。色留袖や訪問着、付け下げ、色無地などがこれにあたります。例えば、訪問着は模様が縫い目をまたいで続いている「絵羽模様(えばもよう)」が特徴で、入学式やお茶会、華やかなパーティーにも適しています。
さらにカジュアルな装いとして「外出着」や「街着・普段着」があり、小紋や紬(つむぎ)、木綿、浴衣などがこれに含まれます。友人との食事やお稽古など、気軽な場で楽しめる着物です。模様の種類や素材によっても印象が変わるため、シーンに合わせた工夫が大切です。
男性の着物の格
男性の着物にも、実はしっかりとした格の違いがあります。格式の高い第一礼装にあたるのは「黒羽二重五つ紋付(くろはぶたえいつつもんつき)」で、結婚式や儀式などに用いられます。羽織と袴を合わせた姿が定番で、花婿や仲人、主賓などが着用します。
その下の格にあたるのが「色紋付(いろもんつき)」で、紺やグレーなどの無地の着物に紋を入れた装いです。格式は保ちつつ、少し個性も楽しめる着こなしとして人気です。
カジュアルな着物としては、お召(おめし)や紬、ウールなどがあります。紬は産地や織り方によって雰囲気が変わり、羽織とセットで楽しむ「アンサンブル」スタイルが定番です。くつろぎ着や街着として、食事や趣味の集まりなどで活躍します。
男性の着物は一見シンプルに見えても、素材や紋の有無、袴の有無で格が変わります。場面に応じて上手に選び分けることがポイントです。
着物の格とTPO
着物を楽しむ上で欠かせないのが、TPO(時・場所・場合)に応じた装いを選ぶということです。着物の「格」は、その場にふさわしい装いをするための大切な指針でもあります。
たとえば、結婚式のような晴れの場では、最も格式の高い黒留袖や振袖を選ぶのが基本です。一方で、観劇や食事会などでは、訪問着や小紋といった少し軽めの着物でも問題ありません。お茶会や初詣などの行事では、色無地や付け下げが重宝されます。
また、帯や小物にも格があり、着物の種類に合わせて選ぶことで全体のバランスが整います。礼装には金銀の帯や白の帯締め、小物も品のある素材を使うのが基本です。街着では遊び心を取り入れたコーディネートも楽しめます。
TPOに合った着物選びは、相手への敬意を表すと同時に、自分らしさを表現する手段でもあります。きものの格を知り、上手に活かすことで、より豊かな和の装いを楽しめるようになるでしょう。